顎顔面の形態は、遺伝による場合が多く認められ、歯列や咬合は環境によって決定される場合が多いと言われています。
また、下顎前突症は遺伝の影響により発現しやすく、重篤な下顎前突症の1/3は、片親に同じ下顎前突者がおり、1/6は兄弟の少なくとも1人が下顎前突者であったという報告があります。
日本人の反対咬合は上顎骨の劣成長が多く、中顔面の陥凹感を伴う症例が多く、早く前歯の被蓋を改善して、上顎骨の前方発育を促すことが重要です。
私自身、以前は乳歯列期から矯正治療を開始していました.
しかし、矯正の開始時期が早いと、患者様、お母様が飽きてしまうので、現在は混合歯列期、つまり上顎の永久前歯が萌出し、反対だった時に治療を開始しています。
そして、この反対の咬み合わせを子供の矯正治療に対する動機づけにしています。
この時点で、セファロの分析を行います。反対咬合に関しては、Harvold-McNamaraのトライアングルの分析を追加して行います。
私は一度反対咬合を治療し、思春期の成長で後戻りした症例のデータを整理して、上顎4前歯萌出時点の上顎の大きさ(長さ)に対する下顎の大きさを検討し、思春期の後戻りの可能性についてお母様にお話ししています。
その結果、後戻りの可能性が低い、機能性や歯槽性の反対咬合の場合には、前歯の被蓋の改善を行います。
一方、後戻りの可能性が高い場合は、まったく手を付けずに18歳以降外科矯正を選択する場合もあります。また、顎を切るということに抵抗感を感じるご家族の場合は、顎の成長を抑えるチンキャップや上顎前方牽引装置などを使用し、経過を観察していきます。
そして、思春期の成長を手根骨や身長の伸びなどで観察していきます。女子の場合は初潮が一つの目安になりますが、男子の場合は身長の伸びで判断しています。
しかし、中にはバスケットボールなどの運動をしていると18歳でも身長が伸び続ける思春期の晩期成長が著しい患者様がいることもあり、成長の量、方向、時期を予測することの難しさを感じています。
結論的には、できるだけ装置の入っている期間が少なくなるように考えて、治療を行っています。
しかし、先ほどお話ししたように患者様の成長の予測ができないことから10年近くお付き合いする患者様がいるのも事実です。
親が反対咬合の矯正治療
歯科臨床
- 2016年4月4日