矯正治療の開始時期は、乳歯列弓から開始する、上下の前歯が生えそろってから開始する、あるいはすべての永久歯が生えそろってから開始するというように様々な開始時期があります。
本クリニックでは乳歯列から開始することは、あまり行わなくなりました。というのは、矯正治療の目的は乳歯列ではなく、永久歯列の咬合を作ることです。
また、開業当初、小児歯科の先生からの紹介が多かったこともあり、乳歯列から矯正治療を開始していました。
つまり、小学校就学前から開始し、乳歯列の悪い歯並びが改善されたとしても、永久歯が生えそろうまで経過を診ていくことになります。
しかし、6年間も定期的に通院することに、お子様、母親とも飽きてしまうことになり、中途半端な矯正治療で終了してしまうことが多かった反省があります。
上下の前歯が生えそろってから開始する第Ⅰ期は、取りあえず患者様の主訴を改善することで、その後治療の必要性がない患者様や、その後再度非抜歯で矯正治療ができる場合に治療を開始しています。また、習癖等の改善もこの時期から行っています。
さらに、積極的に永久歯が生えるスペースを作ることで、非抜歯で治療が進められるケースはこの時期からのスタートとなります。
すべての永久歯が生えそろってから開始する第Ⅱ期は、抜歯症例になるケースが中心となります。
典型的なケースとしては、上顎前突(出っ歯)の患者様の開始時期は、上あごの第2大臼歯が生えてからになります。
通常、抜歯の場合は上下のあご4本の小臼歯抜歯になりますが、場合によっては片あごの小臼歯抜歯の時もあります。
骨格性下顎前突症の女子の場合には、初潮が開始されてから治療を始める時もあります。
また、初診がが永久歯列の場合は、この時期からの治療開始となるため、抜歯の場合や、非抜歯の場合があります。
顎変形症の場合は、顎顔面の成長を利用して改善を行うというよりは、成長発育が残っている間は経過観察を行い、成長発育が落ち着いたところで、外科的矯正治療の選択が多いようです。
また、同じ成人の患者様でも、子育てが終わった40代、50代の患者様も矯正治療により、自分の口腔内環境を整えることを希望する方が増えているのも事実です。
しかしながら、歯根吸収、ブラックトライアングル、治療期間(中には予想以上に治療期間がかかる患者様がいること)の問題をよく説明して開始することが必要です。
また、別な見方から、お子様が矯正治療を希望した際、母親は非常に熱心ですが、本人はまったく興味がないという患者様の場合は、歯ブラシも不十分で、矯正治療期間も長引き、治療後多くのむし歯をつくってしまうこともあります。特に、小学生の高学年男子に多い傾向があります。
一方、高校生の男子が矯正治療を希望して来院した場合は、自分から矯正治療を希望して来院するケースが多く、むし歯もつくらず、治療期間も予想より早く終了することが多いと考えられます。
つまり、一方では患者様が矯正治療を希望してきた時が医療に最適な時期といえます。
矯正治療を始める時期
歯科臨床
- 2016年3月14日