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HISA DENTALCLINIC
DIRECTOR’s BLOG

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咬合誘導のポイント(乳歯と永久歯の交換時期)

歯科に関して

小児の歯列は空隙歯列弓であり、永久歯列と違って、歯と歯の間に空隙が存在いていることが望ましいのです。
乳歯列は3歳くらいで上下顎20本の歯が生えて完成します。そして、成長発育とともに、歯と歯の間の空隙少しずつ大きくなり、永久歯が生える準備が行われ、6歳前後に下の前歯から順々に乳歯と永久歯の交換が行われます。
乳歯列において、将来の永久歯咬合を予測する上で、第1大臼萌出前のTerminal plane(下図)を診ることが重要です。
Terminal plane.jpg
すなわち、Terminal planeは中心咬合位での上下顎第二乳臼歯の近遠心的咬合関係です。
これはA垂直型、B遠心型およびC近心型があり、多くは垂直型で、後でお話しするLee way spaceの差で、下顎第一大臼歯が近心に移動し、第一大臼歯がⅠ級関係に調整されます。
従って、遠心型は上顎前突、近心型は反対咬合の咬合関係で、この時期から、歯列の前後関係の改善の必要性が予測できるのです。
また、乳歯列の空隙には霊長空隙と発育空隙があります。霊長空隙は上顎では乳側切歯と乳犬歯の間、下顎では乳犬歯と第一乳臼歯の間にある空隙で、生理的咬合調整に利用さます(下図)。
霊長空隙.jpg
また、発育空隙は、生理的空隙で、霊長空隙以外の空隙をいいます。小さな乳歯から大きな永久歯への交換の際の調整に用いられます。
下あごの前歯から永久歯が生えてきて、乳歯と永久歯の交換が行われます。交換の時期になっても十分な発育空隙がない歯列では永久歯がでこぼこになります。
そして、この時期にその歯並びを心配して、母親がお子様を連れて相談に来院するわけです。そして、最終的に永久歯の咬合がどうなるのかを予測する必要性があり、保護者に的確なアドバイスが必要となります。
また、この時期には乳歯と永久歯の交換時の乳歯抜歯ルールがあります。
①左右同名歯は同時に交換することが望ましい。
たとえば、右側だけ生えて左側が遅れて生えると右側永久歯は左側へ移動しやすい。
②永久歯が乳歯の後方から生えてきたら、乳歯の歯根が残っていて歯の動揺が少なくても、その乳歯を抜歯する。
下顎の前歯はエレベータ式よりはエスカレータ式に生えるので、乳歯を抜歯してあげないと永久歯が前に行けない。
③永久歯が綺麗に並ぶ空隙がないからといって、隣の乳歯まで抜歯しない(異所萌出)。
歯根が残っている乳歯を抜歯すると、歯槽骨の発育にマイナスの影響を及ぼすので、抜歯しない。
さらに、上下顎4前歯が萌出した時点Lee way spaceを考えることが重要です(下図)。
Leeway space.jpg
Lee way spaceとは乳歯C+D+Eの幅径の総和と永久歯3+4+5の幅径の総和の差で、上顎では1mm乳歯が大きく、下顎では3mm乳歯の方が大きいということです。
従って、上顎では片側でわずか1mmの違いのため、すべて永久歯に生え変わった場合に側切歯から反対側側切歯のデコボコがほとんど変わらないと予測できます。
一方、下顎では片側で3mmあり、これは通常上下顎の第一大臼歯咬合の調整に用いられますが、この空隙をうまく使えば4mm程度の前歯のデコボコは緩和できることになります。
いずれにしても、第Ⅰ期の矯正治療の診断は上下顎4前歯が萌出した時点で、セファログラムコレクションを用いたALD(arch length discrepancy)より診断する必要があります。