同じ日本人でも下あごの付着が急なハイアングルな方、下あごの付着が平均的な方、あるいは下あごの付着が緩いローアングルな方がいます。
これらは基準平面SNやFHに対する下顎下縁平面のなす角度で決まります。つまり、下図のようにSN平面(青のライン)と下顎下縁平面(赤のライン)のなす角度が、およそ40°以上の方がハイアングルケースといいます。40~30°の方が平均的な方、30°以下の方がローアングルケースといいます。
また、日本人と白人を比較すると白人の方がおよそ5°ハイアングル傾向にあります。つまり、日本人の方が白人より顔が長いのです。しかし、ローアングルな白人の方が日本人より顔が長く見えませんか。これは頭の形が超短頭型な日本人と長頭型な白人の違いによるものです。すなわち、日本人は頭幅が大きいので顔が長くみえないのです。
それでは矯正治療においてどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴を説明いたします。
まず、ハイアングルな方は、顔の骨格が面長で、細長くてエラが張っていない人で、咀嚼筋や周囲筋が弱い傾向があります。また、咀嚼筋を鍛えるトレーニング(MFT口腔筋機能療法)が必要な場合があります。前歯のかみ合わせが浅く、わずかなかみ合わせの変化でも顎関節症を引き起こしやすい傾向があります。つまり、矯正治療で歯の移動が速く、咬合高径に変化が生じた場合に顎関節症を引き起こす可能性が高くなります。不正咬合の種類では開咬症例やハイアングルの上顎前突症例などMd-SNを大きくしない治療が必要になります。
一方、ローアングルな方は、エラが張った人、角張ったイメージの顔の人で、咀嚼筋や周囲筋が極めて強く、歯ぎしりの傾向がある方がいます。咀嚼筋を鍛えるトレーニングは必要りません。逆に、咀嚼筋と筋膜を伸ばすストレッチトレーニング(MFT口腔筋機能療法)が必要な場合があります。また顎関節やかみ合わせに問題が生じづらいようです。しかし、強い咬合力(噛む力)によって、歯は咬耗(摩耗)しやすく、それにより顎関節に異常が発生することがあります。前歯のかみ合わせは一般に深く、バイトオープニグに苦労する症例が多いようです。典型的なのはAngle Ⅱ級2類のデープバイト症例です。
また、一般の歯科治療の場合、ハイアングルな方とローアングルな方の違いを頭にいれ、治療する必要性があります。
すなわち、ハイアングルな方は①咀嚼筋が弱く、噛む力も弱い。②下顔面が長くなる傾向にある。③歯のすり減りにより下顎は後方へ偏位、前歯のかみ合わせは浅くなる。④気道が狭く、口呼吸となりやすい。⑤舌をかみやすくなる。⑥口唇の抑えが弱く、口が開きやすくなる。⑦かみ合わせの不具合により、下顎の偏位を起こしやすい。
一方、ローアングルな方は①咀嚼筋が強いため、噛む力も強い。②歯のすり減りにより下顔面が短くなる。③その際の偏位は前方へ移動する。④咀嚼パターンは水平的であり、歯に負担がかかりやすい。⑤臼歯部が喪失しやすい。⑥前歯のかみあわせが深くなりやすい。
ハイアングルとローアングル
その他
- 2015年6月6日