本来、乳歯は下から生えてくる永久歯に押し出されるようにして、抜歯せずとも自然に抜け落ちることが望ましいのかもしれません。
しかし、実際には乳歯を抜いてあげた方がよい場合があります。今回、混合歯列期(乳歯と永久歯が混じって生えている時期)でよく遭遇する3例を紹介しましょう。
①下の前歯が抜けてないうちに、後ろから永久歯が出てきた。
この場合、後ろから出てきた永久歯は、萌出しながら前方へ移動します。乳歯を抜いてあげることで、エスカレータ式に望ましい前方の位置に移動します。ただし、萌出する十分な空隙がなければ、途中の位置で止まります。だからといって、空隙をつくるために、隣の乳歯を抜歯することは望ましくありません。
②上あごの第1乳臼歯がまったく動揺しないのに、かなり上方から永久歯らしき白いものが歯茎からみえる。
これは、後から出てくる永久歯の歯胚(歯の芽)の位置異常で、あごが小さくかなり乱排な歯並びになる子供に多くみられます。かなり歯根が残っている場合もありますが、乳歯を抜歯することで、歯列の外側にある永久歯の位置が萌出しながら内側の望ましい位置に戻ります。
③下あごの右側にある第2乳臼歯はまだ動揺もしていないのに、左側の同じ歯はすでに脱落して永久歯が萌出している。
X線写真を撮ってみると、後から出てくる永久歯が6歳臼歯の方向に向かっており、第2乳臼歯の奥の歯根はほとんど吸収されていますが、手前の歯根はまったく吸収されていません。
これは、永久歯の萌出方向の異常で、永久歯の歯冠の幅が乳歯に比べて小さいことに起因しています。これも、反対側の同じ部位の歯はすでに永久歯が萌出しているので、抜歯した方がよいと判断されます。
下の口腔内写真は②上あごの第1乳臼歯がまったく動揺しないのに、第1小臼歯の歯冠が歯茎から見えている例です。早速、第1乳臼歯を抜歯しました。
乳歯を抜歯する必要性
歯科に関して
- 2015年4月26日