テレビで放映され、話題になった「食後30分以内の歯磨きの是非」について、お話ししましょう。
この話題は2011年アメリカの歯科団体が発表したもので、抜去歯をスプライトにつけると、歯の表面が酸で溶ける。
この溶けた歯を取り出して、人の口の中に入れると、唾液の作用で再石灰化が起こり、溶けた表面が強化される。それが、30分以上口の中に入れたままにしておくと、歯ブラシをしてもあまりすり減ることはないが、30分以内(10分や20分)では再石灰化が不十分なため、歯ブラシをするとすり減りやすいということでした。
しかし、この実験結果から、「歯磨きは食後30分以上たってからやりましょう。」という根拠にはなりません。
つまり、実際には食事をした後は、脱灰と再石灰化が同時に進行して、再石灰化よりも脱灰の方が強く起こり、約30分は歯が溶けること(脱灰)が勝っています。
つまり、何も食べないで口の中に抜去歯を入れた状況とは全く違うことをご理解ください。
従って、その脱灰が進行している30分歯磨きをしないことは、脱灰を進行させていることになるのです。
また、唾液には食後酸性に傾いたpHを中性に戻す緩衝作用があり、かつ唾液には石灰質を修復させるミネラルが含まれています。そのため、その作用を生かすべきで、食後30分は歯磨きを控えた方がよいと考える先生もいるようです。
しかし、食後30分歯磨きをしないでいることは、プラーク中の細菌によって糖分が分解され、酸が産生され、歯が溶け始める余計な時間を与えることになります。
食後30分以内に歯磨きをして、酸を産生するプラークを取り除き、唾液の緩衝作用、再石灰化作用を期待した方が望ましいと思われます。
私自身は当然30分以内の歯磨きを推奨する人間です。
この話題は、食後の歯磨きを推奨している保育園、幼稚園、小学校の現場を混乱させました。また、日本小児歯科学会でも学会からのお知らせとして、従来通り30分以内の歯磨きを推奨しています。
食後30分以内の歯磨きの是非
歯科に関して
- 2015年7月14日