loader image

HISA DENTALCLINIC
DIRECTOR’s BLOG

HISA DENTALCLINIC
DIRECTOR’s BLOG

舌痛症再考(2)

歯科に関して

今回は、舌痛症の原因と治療について考えます。
舌痛症の原因は不明とされていますが、前回お話ししたような臨床所見や治療に対する反応から、口腔内の異常感や疼痛などはセロトニンやノルアドレナリンなど脳内神経伝達物質系の異常によるものではないかと推測されるそうです。
抗うつ薬への治療反応性はそれらを裏付けるものだそうです。
本症の病態仮説として、口腔の感覚神経が電話回線の混線を起こしているようなものといった例え話があるそうです。
この感覚神経の混線は、睡眠不足や疲労などによってしばしば増悪するようです。
従来、舌の痛みは何らかの刺激(口内炎などのキズや火傷など)が原因で生じるもので、そのような刺激がない状態での痛みは異常と考えられてきました。
しかし、最近の脳科学の知見によると、脳は全く外部入力(外からの刺激)がなくても知覚経験を創造できることが明らかになっているようです。
このような痛みは中枢神経系のかなり高次の部分、すなわち知覚回路(自分の体の状態をモニターしているところ)を通る電気信号の流れが変化することによって引き起こされるのではないかと考えられています。
治療は抗うつ薬が有効だそうです。
現在、最も有望な治療法は抗うつ薬を中心とした薬物療法だそうです。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、三環系抗うつ薬の内服治療が中心のようです。
30年以上前から、舌痛症にアミトリプチリン塩酸塩などの三環系抗うつ薬が有効であることが報告されていれ、現在では、うつ病の有無に関わらず、この薬が鎮痛効果を持つことが科学的に証明されているそうです。
処方の際は、もともとはうつ病に使う薬を、今回は口腔の痛みなどを治療するために使いますと説明してから服用してもらうそうです。
早ければ4-5日目から、遅くても1週間から10日くらいで痛みが緩和していくそうです。
理想的に治療が進展していけば、3~4週間後には痛みは7割方改善していくそうです。
効果が十分得られたらそのまま数ヶ月は薬を続けて再発・再燃を防ぐそうです。
一生飲み続けないといけないものではありませんが、最終的には、半年から1年くらいは続けた方がよい場合が多いようです。年単位で継続しても、きちんと通院していれば特に副作用などの問題はなさそうです。
しかし、舌痛症の痛みに対して、抗うつ薬なら何でも効くというものではなく、どうしても薬が合う、合わないという問題があるそうです。
つまり、効果には残念ながら個人差があるということです。
その患者さんごとに脳内で起こっている変化が微妙に異なる部分があるらしく、一つの薬で全員が治るというところまでは確立されていないようです。
私のクリニックの患者様はリフレックス錠(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)とエピファイ散(ドパミンD2受容体部分作動薬)を処方され、かなり改善されたそうです。
最後に舌痛症再考は豊福先生の部屋を参考にさせていただきました。ここにお礼申し上げます。